大きな歓声が上がる。
今日は大方の予想通りのデータが得られたようだ。
結果待ちの緊張が瓦解して、安堵や快哉に変わるこの瞬間――。横並びだから顔は見えないが、みんな同じ熱いものを感じる。このときばかりは日頃の悩みも憂いも消え去る。このために生きてきた、というほどではないにしても、生活の中の一番の喜びであることは間違いないだろう。
しばしの無言の歓喜のあと、余韻を引いた声がひとりごつ。
「やはり精度が上がってきている」
大勢いるのに誰も応えなかった。みなが黙って頷いている。
今回の成功は、たくさんの小さな努力の上に成り立っている。
全員がそれを理解しているから、代表して声を出す者がいないのだ。
そして、ここにいる全員がわかっている。
いつまでも余韻に浸っているわけにはいかない、と。
「各自、なすべきことをなしましょう。なにかイレギュラーが起きた場合は、昼の会議を待たずに知らせに来るように。解散」
チーフの合図でみなが四方八方に散っていく。明日に向けての準備が始まる。
〇 × 〇
ぼくのおばあちゃんは野さいをそだてています。
おばあちゃんのはたけには、まねきんのかかしがあります。
おばあちゃんはいつも、まねきんにはでなエプロンをつけます。
赤とピンクと黄色があります。
ほかの人のはたけは、ネットや光るテープでたいさくをしていますが、おばあちゃんはまねきんです。
だけど、鳥が入ってくるのは、見たことがないです。
ぼくはあのまねきんがこわいから、鳥は近づかないんだと思います。
ぼくにはちょっとだけ気もちがわかります。
うごかないって知っていても、近よりたくないからです。
〇 〇 〇
この日はベテランたちの予想も割れていた。
順当にいけば「赤」が自然。だが気温が高い日に赤は選ばれにくい。今日は今年一番の猛暑になる日だ。
ならば「ピンク」か。いいや、昨日まで物干し竿にピンクは見られていない。洗濯が間に合うか微妙だ。
となると継続して「黄色」のままか。しかし三日連続は極めてまれだ。それに昨日の風のせいで、だいぶ砂がついて汚れている。
畦道に軽トラが入ってくる。タイムアップのようだ。
いつもの場所で止まり、キミさんが降りてくる。いつもと変わらない様子だが、見慣れないものを携えている。
「あれは!?」
「なんということだ」
「まさか…」
みなが見守る中、キミさんはマネキンのほうに向かっていく。
マネキンから黄色いエプロンを外して……。
そして、青いエプロンをつけた!
はてさて。
望んでいようがいまいが、明日はやってくる。


